冬になると、暖房や給湯にかかる光熱費が気になります。「設定温度を1℃変えるだけで年間○円節約」「10の工夫で合計○万円お得」といった情報を見かけることもあります。
こうした情報は家計を見直すきっかけになります。しかし、紹介されている節約額が、そのまま自分の家庭にも当てはまるとは限りません。
今回は資源エネルギー庁、消費者庁、製品安全の公的資料などを参考に、冬の光熱費を無理なく見直す7つの工夫と、節約情報を正しく判断するポイントを紹介します。
この連載について:「田中実の消費生活教室」は暮らしの安全と消費者教育を目的とする情報提供連載です。公的な消費生活相談窓口ではなく、個別相談・あっせんは受け付けていません。契約トラブルなどでお困りの際は、消費者ホットライン188をご利用ください。
1.「年間○円節約」は計算条件を確認する
資源エネルギー庁は、エアコン暖房の設定を21℃から20℃へ下げた場合、一定の条件下で年間約1,650円の節約になるという試算を紹介しています。
これは外気温6℃、能力2.2kWのエアコンを1日9時間使う場合などの条件による試算であり、すべての家庭に当てはまる金額ではありません。
住宅の断熱性能、使う時間、電気料金、家族構成によって結果は変わります。「年間の節約額」と「冬の一定期間の節約額」も対象期間が違います。
複数の節約額を足した数字を見る際も、算出条件や効果の重複がないか確かめたいところです。大切なのは、金額の大きさだけでなく、自分の家庭でどの程度の効果を期待できるのかを考えることです。
2.暖房は設定温度だけでなく、実際の室温を確認する
冬の省エネでは、室温20℃が一つの目安として紹介されています。ただしエアコンの設定温度と、実際の部屋の温度は同じとは限りません。窓際や足元で寒さが異なることもあります。
室温計を使い、家族が過ごす場所の温度を確認しましょう。世界保健機関(WHO)は、寒い季節の健康を守るための室温として、一般の住民に18℃以上を一つの基準としています。高齢者や乳幼児、健康状態によっては、より暖かい環境が必要になる場合があります。
節約を優先して寒さを我慢するのではなく、健康を守れる室温を確保したうえで無駄を減らすことが大切です。
3.エアコンは自動調節とフィルター掃除を活用する
エアコンの風量を弱くすれば必ず電気代が安くなる、とは限りません。部屋を設定温度まで暖める際の運転効率も関係するため、機種によっては自動運転や自動風量が適している場合があります。取扱説明書の推奨設定を確認しましょう。
フィルターにほこりがたまると運転効率が落ちることがあります。定期的な清掃、室外機周辺の整理、適切な風向きの調整など、買い替えを伴わない工夫から始めてみましょう。
4.こたつは布団の工夫で省エネ。ただし製品ごとの安全性を確認する
資源エネルギー庁は、こたつ布団に上掛けと敷布団を組み合わせる省エネ方法を紹介しています。こたつ布団だけの場合との比較で、1日5時間使用する条件では年間32.48kWh、約1,010円の節約になる試算です。
つまりこたつの上掛け・敷布団の併用自体は、公的にも紹介されている省エネ方法です。一方、電気カーペット、電気マット、電気毛布などには、それぞれ使用上の注意があります。
製品評価技術基盤機構(NITE)は、電気マットの過度な折り曲げによる発煙・焼損や、電気毛布・電気あんかによる低温やけどなどの事故を紹介しています。こたつと別の暖房器具を組み合わせる場合には、双方の取扱説明書で併用できるかを確認してください。
省エネの工夫は、製品を安全に使うことが大前提です。
5.お風呂とシャワーは快適さを保ちながら見直す
お湯を作るにはガスや電気などのエネルギーが必要です。シャワーを使わない時間は止める、給湯温度を必要以上に高くしないといった工夫は、使用量を見直すきっかけになります。
ただし、冬は浴室や脱衣所の寒さにも配慮が必要です。節約のために無理に暖房を控えるのではなく、安全で快適な環境を守りながら、お湯や水の無駄を減らしましょう。
関連情報:ガス代を減らすために最初に確認したい5つのこと/水道代を減らすために最初に確認したい5つのこと
6.冷蔵庫と照明は、使い方と買い替え費用を確認する
冷蔵庫では食品を詰め込みすぎず、冷気の通り道を確保しましょう。照明は白熱電球からLEDへ変更することで消費電力を減らせる場合があります。
ただし、LEDへの交換には購入費用が必要です。照明器具との適合性、使用頻度、電気料金などを考え、どの程度の期間で交換費用を回収できるかも確認したいところです。
買い替えだけが正解とは限りません。関連情報:家電を買い替える前に確認したい5つのこと
7.窓の断熱改修は、補助金の期限と契約内容に注意する
窓の断熱性能を高めると、部屋の熱が逃げにくくなり、暖房を効率よく使える可能性があります。「先進的窓リノベ2026事業」では、要件を満たす既存住宅の窓改修について、住宅1戸当たり最大100万円を上限とする補助制度があります。
「最大100万円」は、すべての家庭が100万円を受け取れるという意味ではありません。実際の補助額は、対象製品や工事内容などによって変わります。
2026年11月時点で、申請期限が迫っています
2026年11月7日時点で確認できる公式案内では、交付申請の予約は遅くとも11月16日まで、通常の交付申請は遅くとも12月31日までです。いずれも予算上限に達した場合は早期に終了します。対象となるのは、原則として工事請負契約を結んだうえで2025年11月28日以降に着手した工事です。
ここで大切なのは、予約は工事前に誰でも行える手続きではないということです。対象製品の型番が決定し、契約工事の最初の工事に着手した後に、登録事業者が手続きを行います。そのため、今から業者探しを始める家庭では、11月16日の予約に間に合わない可能性があります。
もっとも予約は任意であり、予約をしなければ必ず補助金を受け取れないわけではありません。工事完了後に通常の交付申請を行う方法もあります。予約が承認された場合の有効期間は、原則として予約提出から3か月後または2026年12月31日のいずれか早い日です。予約したからといって無条件で年末まで予算が確保されるわけではありません。
「期限が近いから」と慌てて契約せず、事業の公式サイトで予算と受付状況を確かめてください。工事前写真など、申請に必要な書類についても施工業者と事前に確認しましょう。
申請は発注者と施工業者の共同申請
交付申請は、工事の発注者と施工業者が共同で行い、具体的な手続きは登録された施工業者が代表して行います。発注者は書類の提出等に協力し、補助金の還元方法についても事前に確認します。
「補助金で実質無料」という勧誘にも注意
「補助金で実質無料」「登録事業者だから国が認めた優良業者」といった説明を受けても、その場で契約せず確認しましょう。窓リノベ公式サイトは、事業者登録は国や事務局が優良事業者として認定したことを意味しないと明記しています。
契約前には、工事総額、補助金の見込額、自己負担額、補助金が交付されなかった場合の費用負担、解約条件を書面で確認し、必要に応じて複数の業者から見積もりを取りましょう。
訪問販売に当たる契約では、条件を満たせばクーリング・オフできる場合があります。強引な勧誘や契約トラブルで困ったときは、消費者ホットライン188などの公的窓口に相談してください。
節約情報を見たら確認したい3つのこと
① 金額の計算条件は明示されているか
年間と冬期の違い、使用時間、電気・ガス料金の単価、比較条件を確かめましょう。
② 自分の家庭にも当てはまるか
住宅の断熱性能、家族構成、生活時間、使っている機器によって効果は違います。
③ 健康・安全・契約条件に問題はないか
寒さを我慢したり、家電を危険な方法で使ったりしてまで節約する必要はありません。補助金がある場合も、期限と契約条件を確認しましょう。
まとめ――大切なのは無理なく続けられること
冬の光熱費を見直す方法は、暖房の使い方から家電の管理、窓の断熱まで幅広くあります。ただし、魅力的な節約額が自分の家庭で必ず実現できるとは限りません。
賢い節約とは、暮らしの安心と健康を守りながら、必要のない支出を減らすこと。数字の根拠を確かめ、無理なく続けられる工夫から始めてみましょう。
関連情報:電気代を減らすために最初に確認したい5つのこと/節約で削らない支出を決める前に確認したい5つのこと
参考資料・情報確認日
- 資源エネルギー庁「無理のない省エネ節約|空調」
- 消費者庁「室内温度を見直す」
- 政府広報オンライン「省エネのポイントを部屋別にご紹介!」
- WHO「Housing and Health Guidelines」
- NITE「電気マット、電気毛布、電気あんかの事故」
- 先進的窓リノベ2026事業「対象要件の詳細(住宅)」
- 先進的窓リノベ2026事業「申請手続きの詳細(住宅)」
- 先進的窓リノベ2026事業「※告知※2026年11月16日をもって、交付申請の予約の受付を終了します。」
- 消費者庁「悪質なリフォーム事業者にご注意ください!!」
情報確認日:2026年11月7日
更新履歴:2026年11月7日 公開(公的資料に基づき内容を確認)
執筆:田中 実
本記事は協和合同会社が運営する情報提供連載「田中実の消費生活教室」の記事です。個別の消費生活相談・あっせんは受け付けていません。補助金の制度や予算・受付状況は変更される場合があります。最新情報を必ず公式サイトで確認してください。

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