「もし明日、夜中に停電したら」――懐中電灯はすぐ取り出せますか。スマートフォンを充電できますか。家族が離れているときの連絡方法は決めていますか。
停電は地震や台風・大雨だけでなく、設備トラブルなどでも起こり得ます。停電すると照明や冷蔵庫、冷暖房、通信機器が使えなくなるほか、建物によっては給水ポンプが止まって断水することもあります。
「田中実の防災教室」第2号では、家庭で必要な備えを「明かり」「スマホ・情報」「冷蔵庫・食事」「水・トイレ」「家族の連絡」「安全な復電」の順に確認します。買い足すことが目的ではなく、まず今ある物が使えるか点検しましょう。
連載企画:田中 実(防災士)/記事制作・編集:もし明日編集部(AIを補助的に使用)。本記事は協和合同会社による民間の情報提供です。個別の安全判断や公的な警報・避難指示を行いません。
まずは結論:家庭の停電対策で確認したい10項目
- □ 懐中電灯またはLEDランタンの置き場所を家族全員が知っている
- □ 予備の乾電池・充電池を用意し、点灯や残量を確認した
- □ スマホ用充電ケーブルとモバイルバッテリーが使える
- □ ラジオなど、スマホ以外の情報収集手段を考えた
- □ 水と、加熱不要でも食べられる食品を備えている
- □ 冷蔵庫の開閉を控えるなど、食品の扱いを家族で共有した
- □ 携帯トイレ・衛生用品など、断水時の備えがある
- □ 家族の連絡先、集合場所、安否確認方法を決めている
- □ 分電盤の位置と、避難時・復電時の注意点を把握している
- □ 乳幼児・高齢者・医療機器を使う方の個別の備えを確認している
全部を一度にそろえる必要はありません。今日1項目、実際に確認することから始めましょう。
1.停電中の明かりを確保する|暗闇で慌てないために
防災庁の「家庭における地震時等の停電対策」では、夜間の停電に備えた照明の準備が呼びかけられています。懐中電灯は、寝室の枕元や出入り口など、暗くても手を伸ばせる場所に置くと使いやすくなります。
家族で確認すること
- 懐中電灯・LEDランタンが点灯するか、電池の種類と残量を点検する。
- 廊下や階段の足元を照らせるよう、持ち運び方と置き場所を考える。
- 家具やガラスの破片がある状況に備えて、歩きやすい靴・スリッパの位置も確認する。
ろうそくなどの裸火は、余震や転倒した物による火災の危険があるため、できるだけ電池式照明を優先してください。災害で周囲が危険なときは、むやみに移動せず安全確保を優先します。
2.スマホ・ラジオを使える状態にする|停電中の情報収集
停電の範囲、復旧見込み、気象警報、自治体の避難情報を確認するには、通信手段の確保が欠かせません。ただし、停電時には携帯基地局や自宅のWi-Fiルーターなどにも影響が出ることがあります。スマホだけに頼り切らない工夫が大切です。
- 台風などが近づく前は、スマートフォンと充電式ライトを充電しておく。
- モバイルバッテリーの残量・接続ケーブル・対応端子を点検する。
- 自治体、気象庁、契約している電力会社の公式サイトやアプリを確認できるようにする。
- 携帯ラジオなど、インターネットが使えない場合の情報源も用意する。
モバイルバッテリーやポータブル電源は、高温・強い衝撃・雨水に注意し、製品の取扱説明書に従って保管・使用します。膨らみ、異臭、異常発熱などがある製品は使用しないでください。
3.冷蔵庫の扉はできるだけ開けない|停電後の食品安全
停電中は冷蔵庫と冷凍庫の開閉をできるだけ減らし、庫内の温度上昇を抑えます。農林水産省は、扉を開けない場合の低温維持の目安を、冷蔵庫で約4時間、冷凍庫で約1~2日間と説明しています。ただし、気温、食品の量、冷蔵庫の状態などで大きく変わるため、この時間なら必ず安全という意味ではありません。
停電で冷蔵・冷凍庫が長時間停止した場合、農林水産省は次の行動を案内しています。
- 傷みやすい肉・魚・惣菜などは、低温を維持できる目安時間を超えたら廃棄する。
- 完全に溶けた冷凍食品は、再び凍らせない。
- 要冷蔵・要冷凍で適正な保存温度を保てなかった食品は、食べずに処分する。
時間はあくまで目安です。におい・見た目や味見だけで安全を判断せず、温度管理に不安がある食品は無理に食べないでください。出典:農林水産省「停電や断水、大雨による浸水に遭われた地域の皆様へ」(2026年9月8日作成)。
普段から缶詰・レトルト食品など、冷蔵や加熱なしで食べられる物を家族の好みに合わせて備えることも有効です。
4.水・トイレ・冷暖房も確認する|停電が生活全体に及ぶことも
防災庁は、停電による給水ポンプ停止などに伴う断水、冷暖房が使えない場合も想定するよう案内しています。エレベーターやオートロックなど、住宅設備の影響は建物ごとに異なります。
- 飲料水は家族の人数や健康状態に合わせて備える。防災庁の家庭備蓄チェックには、飲料水1人1日3リットル、最低3日分、できれば1週間分と明記されています。
- 携帯トイレ・トイレットペーパー・ウェットティッシュなどの衛生用品を確認する。
- 暑さ・寒さに備え、電気を使わない衣類や保温・遮熱の工夫を考える。
- 停電時に電動ポンプ、給湯器、エレベーターなどがどのように停止するか、管理会社や設備の説明を確認する。
カセットコンロなど火を使う器具は、必ず製品の説明書に従い、換気や周囲の可燃物に注意します。暖房目的での誤使用は危険です。
5.家族の連絡方法を決める|171・web171も確認
停電は家族が全員自宅にいるときに発生するとは限りません。通話やインターネットが混み合う場合にも備えて、安否確認の方法を話し合いましょう。
- 家族が集合する場所を、災害の種類に応じて複数考える。
- 家族で連絡先を紙にも控え、連絡が取れない場合の次の行動を決める。
- 災害用伝言ダイヤル171、インターネットの災害用伝言板web171について、提供条件や使い方を公式情報で確認する。
NTT東日本・西日本は、171やweb171の体験利用日として、原則毎月1日・15日や防災週間などを案内しています。実際の提供状況や条件は災害の状況によって変わるため、利用時には公式案内を確認してください。
参考:NTT東日本「災害用伝言ダイヤル(171)」、「web171体験利用のご案内」
6.発電機と復電後の火災に注意する
安全上、特に重要な確認項目です。携帯発電機(燃料を燃やして発電するタイプ)は、一酸化炭素中毒の危険があるため、屋内・車内・テント内では絶対に使用しないでください。屋外でも窓や換気口から排気が入り込まないよう注意が必要です。充電式のポータブル電源とは仕組みが異なるため、製品の種類を取り違えないでください。
また、停電が復旧するときに、電気ストーブなどが意図せず再作動したり、浸水・損傷した機器から発火したりする「通電火災」が起こることがあります。
- 停電中は、可能であれば電気ストーブなど電熱器具の電源を切り、プラグを抜く。
- 災害で自宅から避難する際、安全に操作できる時間と状況であれば、分電盤のブレーカーを切る。
- 分電盤や周囲が濡れている、損傷している、煙や焦げ臭さがある場合は自分で触ったり復旧作業をしたりしない。安全な場所へ離れ、必要に応じて119番や電気工事の専門家等へ相談する。
- 復電後、浸水や損傷の疑いがある家電は通電せず、異常がない機器も慎重に確認して使う。
地震による電気火災を減らす設備として「感震ブレーカー」もあります。強い揺れを感知して電気を遮断する仕組みで、防災庁は地震時の火災対策の一つとして紹介しています。導入時は住宅の設備、医療機器など停電で影響を受ける機器を確認し、必要に応じて電気工事の専門家等に相談してください。防災庁「自然災害への備えは万全ですか?」。
経済産業省と製品評価技術基盤機構(NITE)は、携帯発電機の一酸化炭素中毒と通電火災について注意を呼びかけています。
参考:経済産業省「停電時の発電機によるCO中毒や、復旧後の通電火災に注意!」(2023年8月29日)、NITE「災害時にも活躍する携帯発電機やポータブル電源の事故と停電復旧後の通電火災に注意!」(2024年8月27日)
7.赤ちゃんや高齢者がいる家庭・医療機器を使う方の備え
家庭ごとに必要な備えは異なります。乳幼児がいる場合は、おむつ、ミルク・離乳食、衛生用品、体温を保てる衣類など、普段使っている物が停電中も用意できるか確認しましょう。
高齢者や障害のある方がいる家庭では、暗い場所での移動経路、服薬情報、連絡先、介助が必要な場合の手順を話し合うことが大切です。
電気で動く医療機器を使用している場合は、停電する前に主治医・機器の提供事業者などへ予備電源、使用可能時間、代替手段、避難先について相談してください。一般的なモバイルバッテリーで医療機器を動かせると決めつけないでください。
停電が起きたら、最初にすること
- 自分と家族の安全を確かめる。揺れや浸水、火災などがあれば安全確保と避難を優先する。
- ライトを確保する。暗闇で不用意に動かず、足元や倒れた家具に注意する。
- 公的情報を確認する。自治体、気象庁、電力会社の案内で停電範囲や必要な行動を確認する。
- 冷蔵庫の開閉を控え、通信端末の電池を節約する。必要に応じ家族と連絡を取る。
- 電気機器の損傷や通電火災に注意する。危険を感じたら電気設備に触れず、専門家等へ連絡する。
停電だけでなく風水害や地震による危険がある場合、家に留まるか避難するかは地域や住宅の状況によって異なります。自治体の最新の避難情報に従い、安全な場所への移動を優先してください。
防災と消費生活の視点|災害に便乗した勧誘にも注意
停電や台風の後には、不安につけ込んだ住宅の点検・修理の勧誘にも注意したいところです。業者から突然「屋根が壊れている」「今すぐ修理が必要」と言われても、その場で契約を急がず、家族や信頼できる専門家に相談してください。危険な場所に自分で上がって確認することは避けましょう。関連記事:「屋根が壊れています」と突然訪問されたら?点検商法で確認したい7つのこと。
まとめ|今日できる「停電への備え」を一つ決めよう
停電への備えは、高価な設備を一度に買うことではありません。まずライトを点灯させ、スマホを充電できるか確かめ、家族と連絡方法を共有することから始められます。
冷蔵庫の食品、断水、燃料式発電機、復電時の火災など、「電気が止まる」こと以外のリスクにも目を向けておきましょう。
「もし明日、災害が起きても。」家庭で少しずつ備えを整えていきたいものです。
あわせて読みたい:「田中実の防災教室」連載案内 / 第1号「防災庁とは?」
アイキャッチ写真:Tawseem Hakak / Unsplash(写真個別ページ)。家庭の停電対策を示すイメージ写真で、公的機関が提供した画像ではありません。
出典・公式情報(2026年11月6日確認)
- 防災庁「家庭における地震時等の停電対策について」(掲載ページの公表日表示は未確認)
- 防災庁「自然災害への備えは万全ですか?チェックしてみよう!」(掲載ページの公表日表示は未確認)
- 農林水産省「停電や断水、大雨による浸水に遭われた地域の皆様へ~食中毒に注意しましょう~」(作成日:2026年9月8日)
- 経済産業省「停電時の発電機によるCO中毒や、復旧後の通電火災に注意!」(2023年8月29日)
- NITE「災害時にも活躍する携帯発電機やポータブル電源の事故と停電復旧後の通電火災に注意!」(2024年8月27日)
- NTT東日本「災害用伝言ダイヤル(171)概要とご提供のしくみ」(提供条件は利用時に最新情報を確認)
確認日:2026年11月6日。備蓄数量、食品の安全、医療機器の電源などは家庭や製品・地域の条件によって変わります。災害時は気象庁・自治体・電力会社等の最新の公式情報を確認してください。本連載は公的機関ではなく、個別の避難判断・医療判断は行いません。

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